「中世遠近法絵画の表現 壁画にみる象徴形式」
中世・キリスト教美術では、内面的な意味の強調が急速に進みます。
内容を明確にするために徹底した人物画へと発展していきました。
金地背景に「聖書」や聖人伝の場面を極度の直接性と単純さをもって描いています。
中心人物とは無関係なものはすべて場面から除外し、情報としての価値評価を基準とするため、すべてに意味がこめられています。
それゆえ、見たままを描こうとするのではなく、
対象のもつ情報が絵画空間を占める比の基準となっています。<パンと魚の奇跡>では、キリストを威厳に満ちた姿で中央にあらわし、
みな正面を向いています。説明的な画面であり、動きも奥行きも感じられません。
この<パンと魚の奇跡>の壁面は聖書の代役であり、
何がおこなわれているかが明瞭にわかれば良いのです。人物・事物は平面的で重ねて描写され、
人物の彫塑的肉付けもみられなくなり、二次元性を強調しています。すべてが平面的、線的で、陰影も重量もなく、極めて様式化されています。
<アブラハムの饗応>は画面中央に箱型のテーブルが置かれています。
ここでは逆遠近法的に描かれています。
おそらくテーブルの上面をあらわしたかったのではないかと思われます。
なにを描くかという描写対象については、はっきり認識していましたが、
それをどこからどのような角度から見て描くかという意識はなかったようです。
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