「ギリシャ・ローマ絵画の遠近法による空間表現」
ギリシャ・ローマ時代では、絵画は彫刻と同等に高く評価されました。
前5世紀末の陶器画、
浮き彫り彫刻は家具や家屋に遠近的描写がみられます。
遠近的描写では前縮法を使用し、楯を横方向から描き、足を正面から描いています。
絵画は初期陶器画の様式展開と一致しています。
絵画はまず純粋なシルエット描法から始まり、輪郭描法へと進み彩色されます。
人体の描写は輪郭線と色の平塗りで描かれ、陰影描写は遅れて発達しました。
遠近によって変化する色彩技法の発達はみられますが、
個々の物体を一つの統一空間のなかに表現はしていません。ギリシャの舞台背景画は、幾何学的方法を用いて遠近法的に構成されました。
ユークリッドは「異なる距離にある等大の2つの対象物の差異は視覚の大きさの比によって定まる」という理論にもとづいて、球面への投影も工夫します。
それにより風景や建築の描写で、遠い物ほど小さく描かれる方法が通常となりました。
古代ギリシャとローマの遠近法は、「背景図法」として知られ、
鑑賞者と対象との間の空間をさまざまに変化させる技術をさし、絵画・彫刻・建築に対する光学的法則の適用を含むものです。
絵画と光学が相互関係をもちながら展開します。
ローマ絵画は紀元前2世紀のポンペイ遺跡の壁画に、
背景としての建築や風景の描写が明確です。ポンペイ遺跡は第一様式から第四様式に分かれ、その形式は多様です。
第一様式はだまし絵による壁面装飾が発見されており、それは第四様式で最も顕著にみられます。
第四様式では、明らかに窓を描いたと考えられる作例がみられます。
区画に分け、そこに戸外の風景や建物などを描いています。このような仮象的な建物の描写は線遠近法であり、
ルネサンスの空間表現を先取りしたかのようです。ポンペイのはずれ、秘技荘の壁画は四面に等身大の人物が写実的に描かれています。
床の描写はわずかながら奥行きをみせています。
さらに寝室の仮称的な建物の描写はみごとです。奥行き方向の線は線遠近法的(斜投影法※1もしくは消失軸遠近法※2に近い作図法)に描かれており、
その視覚効果はまさにだまし絵です。
風景画の描法は古典的様式のものと異なっています。
「印象主義的」な描法であり、印象派の画家と共通のものをもっています。スケッチのような速描き、雰囲気の強調、明暗効果と色調の変化で
形象を暗示し輪郭線を使用していません。
※1:斜投影法…斜線がみな平行になります。
※2:消失軸遠近法…中央の垂直軸上の各点に、鏡映対照的に左右から平行線が収束します。この平行線は平行なまま表現されました。
この構成法は古代よりルネサンスまで適用されます。
物体の連続により奥行きが表現されますが統一的な空間表現には至りません。
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