
レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452年-1519年)
<東方三博士の礼拝>(マギの礼拝ともいわれる)
1481年の未完の作品テンペラ 油彩 板 247×243.5cm
ウフィツィ美術館所蔵
レオナルドは1469年に家族がフィレンツェに移ったとき、ベロッキオの工房に入りました。
ここで修行したあとベロッキオの助手としていくつか作品を描いています。<東方三博士の礼拝>は、ベロッキオの工房から独立して依頼を受けた最初の大作です。
1481年3月フィレンツェ郊外のサン・ドナート・ア・スコペート修道院から依頼された祭壇画です。レオナルドがフィレンツェ時代に描いたもっとも重要な作品。
しかし、フィレンツェではその真価は認められませんでした。
<東方三博士の礼拝>の完璧に緊密さをたもった構図は、
聖母マリアと幼子イエスを三博士が囲み、その外側を羊飼いたちが、さらにその外側を廃墟や馬に乗った人物が取り囲む。聖母子を中心とした同心円状に波紋が広がっていくような構図は、先例のない斬新なものでした。
聖母マリアがヴェツレヘムの家畜小屋で赤ちゃんを産んだあと、
東方からの三人の賢人(王様たちともいわれる)が礼拝に訪れてきたという聖書の場面を描いたものです。この聖書の主題では登場人物が横に並ぶのが通常ですが、
ここでは聖母子を中心に円形をなして描かれており、
登場人物の一人一人の表情はどれも内面が見て取られ、個性的で躍動しています。
聖母子の静と群衆の動との対比もみごとです。
しかしレオナルドがミラノへ旅立ったために未完のままとなってしまいました。
レオナルドは<東方三博士の礼拝>を2年から2年半で作品を仕上げる契約をしていました。
しかしその契約は果たされることは無く、修道院はそれでも10年以上も完成を待ち続けてくれましたが、待ちきれなかったのか、ついには修道院は14年後レオナルドの友人フィリッピーノ・リッピに依頼し、
新たな祭壇画を完成させました。
同じ主題の祭壇画を再依頼し、フィリッピーノ・リッピの<三博士礼拝>はレオナルドの祭壇画とほぼ同じサイズであるだけでなく、
内容的にも明らかにレオナルドの影響を受けています。
24ヶ月、少なくとも30ヶ月以内に完成させるという条件付のなかで、
レオナルドは最初の7ヶ月間は没頭して祭壇画を描きますが、結局は下描きのみの状態で放置。そしてレオナルドは翌年ミラノに発ったため完全に未完のままとなりました。
(未完ながら制作には2年以上もかけいます。)
そして未完の<東方三博士の礼拝>はアメリゴ・ベンチの邸宅に託されました。
その後17世紀にメディチ家の手に渡ります。
未完でありながら、キリストの誕生のドラマが見るものにひしひしと伝わってきます。
そこに、レオナルドの非凡さが見て取れます。未完成といわれながらも、それまでの伝統的な主題を人間ドラマとしての斬新な構図で描き、
光と影の立体的な画面構成をなして、レオナルドの天才ぶりをあらためて感じさせる作品なのです。
レオナルドの絵画技法における特徴は、油絵の具の性質を最大限に利用した、
スフマート(ぼかし技法)と明暗法につきるところですが、<東方三博士の礼拝>において、その画期的手法がはっきりと見てとれます。
レオナルドはこんな意味のメモを残しています。
「絵画において、影をきらうものは、芸術のすばらしさをきらうものだ。色の美しさだけを望む者は、単なる俗人に過ぎない」レオナルドは主題解釈、構図統一、明暗表現、制作方法の点で斬新さを示しています。
東方三博士や群衆よりも聖母子が主題的中心にすえられています。生動感にあふれた60人ほどの群像モティーフが求心的な構図に統合され、
明暗法により前・中・後が連続する新しい古典的絵画空間が実現されました。
一見混乱した人間の群像構成は、
前景・中景・後景の空間のそれまでにない統一性がみられます。聖母子の周りを三人の博士をはじめ多数の礼拝者が円環状に取り巻き、
左側の古代廃墟のモティーフによって前景と結び付けられた背景空間では、背景と前景とのつながりは、聖母子やヨセフの背後の陽気な若者たちによっても強調されています。
構図には二つの局面があげられます。
それは、拡散と集中、混乱と統一、動揺と静謐(せいひつ)。<東方三博士の礼拝>における斬新さは、あらゆる点で見られます。
従来までの絵画作品のように、構図は原寸の下図(カルトーネ)の段階で完全に決定されておらず、曖昧模糊(あいまいもこ)とした可変性と流動性、霊的な雰囲気をかもしだしているところがあげられます。
そして、人物表現は迫真性をなし、人間の身振りを通して魂を感じさせ、
精神的リアリティと生命感溢れる描写が特徴的です。アルベルティの『絵画論』にのっとった遠近法を用いて描いているが、消失点を若干右に動かして、
そこを中心に構図を考えているところにレオナルドらしいオリジナリティがあります。イタリア旅行なら⇒♪日本旅行のイタリア特集♪

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